Hi’z 5 Errand〜はいず 5 えらんど〜

トーキョーN◎VA-The-Detonation

小説

シーン16 ホワイト&ホワイト

事件を解決して数日後。マキシマム・揚は、自宅でくつろいでいる。

ソファーに腰掛けまどろみながら平和な時間を過ごしている。

戦いの傷は、思った以上に深く医者からは数日の絶対安静を申し付けられた。

妻の揚 華月は、マキシマム・揚の体を心配し会社を休んで看病してくれた。

今は、昼食の食器の片付けをしているため席を外している。

DAKが来客を告げる。

「あなた。出て下さる?」

妻の声にまどろんでいたマキシマム・揚が体を起こす。

そしてゆっくりと玄関に向かう。

DAKの画面に映っていたのはセレス・劉だった。両手には大事そうに箱を抱えている。

マキシマム・揚が玄関の扉を開ける。

「久しぶりだな。セレス。元気だったか」

マキシマム・揚が親しげに話しかける。

「はい。私は、大丈夫です。マキシ様は?」

最初に会った時と変わらぬ尊敬の眼差しでマキシマム・揚を見つめながらセレス・劉が答える。
口調は、最初会った時よりは少し柔らかくなった。

「完全に直るにはもうしばらくかかるな。それで今日は、何の用だ」

「本日は、勅使として参りました」

セレス・劉が表情と口調を真摯なものに変える。

「そうか」

マキシマム・揚が勅使に対する礼を取る。

「陛下は、このたびのマキシ様の功績に対しこれを下賜されました。

謹んでお受け取り下さい」

セレス・劉が両手に捧げ持った箱をマキシマム・揚に手渡す。

マキシマム・揚が両手で丁寧に受け取る。

「確かにお渡しいたしました。それでは、私はこれで」

「ああ。またな」

セレス・劉が一礼し帰っていく。

マキシマム・揚が箱を待ち部屋に戻る。机に箱を置きマキシマム・揚が中の品物を見る。

「何に使うものなんだ?」

品物を手にとり珍しそうに眺める。

しばらくして揚 華月が台所から出てくる。

「マキシ。何をしているの?」

「これを陛下から下賜されたんだが何に使うかまったくわからん」

マキシマム・揚が品物の一つを手に取り揚 華月に見せる。

「それは、硯ですよ」

揚 華月がマキシマム・揚の隣に座り下賜された品々を見ていく。

「全て一級品の良い品物ですよ。マキシ。いい物を貰いましたね」

「そうなのか? それで何に使うんだ」

揚 華月が品々を手に取り机の上に配置していく。

そして筆を手に取り墨を含ませ今では、珍しい半紙の上に筆を下ろす。

そして見事な手つきで筆を動かす。

優雅にして流麗な筆致で半紙に見たことも無い形の字を書いた。

書き終わると硯の上に筆を置く。

「このように字を書くために使うものです」

「見事なもんだ」

揚 華月の見事な筆捌きにマキシマム・揚が感嘆の声を上げる。

「はい。それじゃ交替ね」

揚 華月が新たな半紙を準備する。

「俺は、いいよ。華月が使ってくれ」

マキシマム・揚が慌てて手を振る。

「私の国では、古来より書と剣には相通じる極意があると伝えられています。

きっとあなたのためになりますから」

揚 華月がマキシマム・揚に筆を渡す。

仕方なくマキシマム・揚が筆を握りたどたどしい手つきで字を書く。

揚 華月の字とは雲泥の差だ。書き終えると揚 華月が面白そうに笑う。

「笑うなよ」

マキシマム・揚がふてくされたように呟く。

「ごめんなさい。マキシ。あれほど剣を上手く使えるのに筆だとまるで素人のような手つきなんですもの。それが可笑しくて」

揚 華月が再び新たな半紙を置きそこに一と十の字を書く、

「これが見本です。まずこれを上手く書けるように頑張りましょう」

「もういいよ。俺は、剣を振るのが仕事だ。字を書くのは文官の仕事だ」

「マキシ。昔ならそれでも良かったかもしれませんが今のあなたは、王朝の重責を担う

臣下です。書ぐらいたしなんでおかないと恥をかきますよ」

揚 華月が優しい口調でマキシマム・揚を叱る。

「それに陛下もあなたには、剣を振るだけでなく中身の伴った人物になって欲しいのです。

だからこれを下賜されたのですわ。期待に答えないと」

「わかったよ。華月」

マキシマム・揚が筆を取る。

「暇つぶしにはなりそうだ」

揚 華月の書いた字を手本にしながらマキシマム・揚が筆を半紙に走らせる。

「お茶入れますね」

揚 華月が立ち上がる。

「華月。そういえば最初に書いた字はなんて読むんだ?」

マキシマム・揚の問いに揚 華月がいたずらっぽく微笑み答える。

「上手に字を書けるようになったらご褒美に教えてあげます。

頑張ってくださいね。あなた」

マキシマム・揚がその文字の読み方を知るのはしばらく後のことだった。

その文字の読み方を知った時、マキシマム・揚は、照れたようにはにかんだという。



 来栖は、貯金を使って久しぶりに大きな買い物をした。

今日は、品物が届く日だ。朝早くから目覚めプレゼントを待つ子供のようにそわそわと落ち着かない。
DAKが来客を告げる。品物が届いたようだ。

指示を出し品物を事務所の真ん中に置いてもらう。

「さてと。来い。ハースニール」

来栖がハースニールを呼び出す。

来栖の隣に西洋鎧に身を包んだハースニールが現れる。

現れたハースニールが品物を見て目を丸くする。

「マスター。いったい何を買ったんですか?」

「見てわからないか? ビリヤード台だ」

来栖が自慢するように胸を張る。

「それは、わかります。何で事務所の真ん中に置いてあるんですか?」

「他に置く場所が無いからだ」

「他に先に買うべき物があると思うのですが。例えばベッドとか」

「これがベッドだ!」

来栖がばんとビリヤード台を叩く。

ハースニールがぽかんと口を開く。

「机にもなり更に遊べるんだぞ。すごいだろう」

来栖がふふんと勝ち誇った表情で言った。

「つまりその上で寝るおつもりですか?」

「その通り」

ハースニールがあきれたように来栖を見る。

「合理的だろう。ベッドで遊ぶことはできないがビリヤード台では遊ぶことができる。

ベッドは、机の代わりにならないがビリヤード台は、机の代わりになる」

「それを自慢したくて私を呼んだんですか? もう帰っていいですか?」

ハースニールがあきれはてたようにに冷たく言った。

「いや。ちょっと待て。ビリヤードの相手をしてくれ」

来栖がキューを手に取りもう一本のキューをハースニールに投げる。

そして三角形に九つの球を台の上に置く。

「ルールは、知りませんが勝負となればお受けしましょう」

「ルールは簡単だ。白い球を突いて九番球を落とした奴が勝ちだ。

ただし一番から順番に球を落としていかなきゃならない。

球を一つも落とせなかったり白い球をポケットに落としたら交替だ」

「わかりました。では始めましょう」

「俺から先行でいいか?」

ハースニールが頷く。来栖がキューを構え白い球を突いた。

白い球は、まっすぐ九つの球に向かって行き他の球を見事に散らした。



 事件が終わり落ち着くと皆川神社の居間で白房と白耀姫は、再び茜と仁之介と話し合いの場を持った。

「白ちゃん。もうこれ気が済んだわよね。隠れ里に帰りましょう」

茜が口火を切って言った。

それが約束だ。そして約束は、守らないといけない。

白房は、頷くとゆっくりと机を横断し茜の元に向かう。

「ちょっと待った!」

白耀姫が白房に手を伸ばし引っ張り自分の下に引き寄せる。

「まだ、何かあるの? これでも私、最大限に譲歩したのですけど」

茜が白耀姫に冷ややかに見る。

「ならば言おう。このたびの白房の働きは、誠に見事だった。

白虎一族の戦姫としてその勇気と働きに礼を言う」

白耀姫が深々と茜と仁之介にお辞儀する。

「それは、どうも」

あっけにとられた表情で茜は、返礼する。

「ついては、引き続き白房の力を借りたい。これは正式の依頼じゃ。
現実世界での白房の保護は、我が一族の名誉と誇りにかけて行う。どうじゃ?」

茜がわけもわからず呆然とする。

「つまりあれか。まだ喧嘩相手が残っているってことか?」

白耀姫の言葉に喧嘩の匂いを感じ仁之介が言った。

喧嘩の匂いを嗅ぎ分けることとなると仁之介は、鋭い。白耀姫が頷く。

「いかにも。封神せねばばらぬ私の割り当てのアヤカシが残り百と六匹。

これを全て封神するまで白房の助力を求めたい」

白耀姫が懐から巻物を取り出し机の上に広げる。

巻物には、びっしりと漢字で名が書かれている。

その内、二つの名の上に朱で縦線が引いてあった。

(だからさいしょにおにとたたかっていたの?)

白房が白耀姫を見上げ言った。白耀姫が白房の頭を撫でながら頷く。

「その通りじゃ。白房。人間の子を逃がすために思わぬ不覚を取ってしまいお主に助けてもらったというわけじゃ」

仁之介が面白そうに笑う。そして自分を指差しながら告げる。

「俺を白房の代わりにしないか? 俺の方が強いぜ」

「仁之介!」

茜が仁之介を叱る。仁之介が大きな体を小さくして引き下がる。

「まだ幼い白ちゃんを戦わせるなど論外です。

八房を祖先とする犬神の一族の長女として許すわけにはまいりません」

茜が反論を許さぬ強い口調で言った。白耀姫が困ったような表情を見せる。

「なあ、姉貴。可愛い子には旅をさせろって言うじゃねぇか。

しばらくここに白房を置いておいても大丈夫じゃねぇの」

仁之介が横から小さな声で言った。

茜がきつい目でじろりと仁之介を睨みつける。

「仁之介。あなた、いつから姉に意見できるほどえらくなったの?」

「申し訳ありません。お姉様」

仁之介がすごすごと更に後ろに下がっていく。

「では、許可できないということで白ちゃんは、連れて帰ります。よろしいですね」

「むう」

白耀姫は、不満そうに唸るがぐうの音もでない。

「白ちゃん。こっちにいらっしゃい。帰りますよ」

再び白房が机を横断する。未練そうに何度も白耀姫の方を振り返る。

(ねえ、あかねおねえちゃん。ぼく、ここにのこっちゃだめかな?)

「駄目です。あなたは、まだ子供なの。本当は、もっと修行を積んでからじゃないと

現実世界に出てはいけないの。わかった?」

茜が白房をなだめるように言った。

「それに一族の掟は、知っているわね。

重大な用件に関しては、その場にいる最年長者が決定する」

(うん)

白房がとぼとぼと茜の方に歩いて行く。

茜の肩を仁之介が叩く。茜がうっとおしそうに振り返る。

「何よ。仁之介」

「電話だ。兄貴から」

仁之介が茜にポケットロンを差し出す。

それを見てはっとしたように茜が着物の袖を探る。

「あなたいつの間に私のポケットロンを盗ったの」

「さっき。睨まれた時さ」

仁之介が人の悪い笑みを浮かべる。

「お主・・・本当に犬神か?」

あきれたように白耀姫が仁之介を見る。

仁之介は、いたずらが親に見つかった子供のように舌を出した。

「俺は、他の連中と違ってお上品じゃないんだよ。悪かったな」

茜が仁之介の手からポケットロンを奪い取る。

「はい、お電話代わりました、茜です。はい。お兄様、それは・・・。いえ、そんなつもりではありません。
・・・わかりました。そのように伝えます」

茜がため息をつきポケットロンを切る。

「で、兄貴は、何て言ってた」

仁之介が内容を話すように茜を促す。

「白ちゃんは、そのまま現実世界に残って白耀姫を手伝うようにと言っていたわ」

茜が気落ちしたように肩を落とし力なく言った。

「本当か!」

(わーい!)

白房が白耀姫の所に駆け寄り一緒に喜びを露にした。

白耀姫が白房を抱き上げうれしそうに万歳するように何度も持ち上げる。

「最年長者の意見に従うよな。お姉様」

仁之介が慰めるように茜の肩にぽんと手を置く。

「誰のせいだと思っているの!」

茜がぐいぐいと仁之介の胸元を締め上げる。

「あんたが喧嘩ばかりしているから一族の名誉挽回のために白房を手伝わせるなんてお兄様が言うのよ。
あんたが元凶よ。里に帰ったら覚えておきなさい」

「姉貴・・・。その前に俺、死にそう」

締められているせいで仁之介が酸欠になりながら弱々しく呟いた。

白房と白耀姫は、隠れ里に帰る茜と仁之介を見送るため神社の境内に出た。

若葉も二人を見送るため境内に出て来た。

「それじゃ白ちゃん。私達は帰るから。元気でいるのよ」

茜がしゃがみ別れを惜しみ握手するように白房の前足を握る。

「じゃあな。白房」

仁之介が乱暴に白房の頭を撫でる。

(ばいばい。あかねおねえちゃん。じんのすけにいちゃん)

白房が名残惜しそうに尻尾を左右に振る。

「おっと。忘れてた」

仁之介がずかずかと若葉の前にやって来る。

「なんでしょう?」

若葉が仁之介を見上げる。仁之介がごそごそとジャケットの内側を探る。

「これ白房の食費の足しにしてくれ。本当は軍資金だったんだが隠れ里に帰るとまた使う機会が
いつになるかわかんねえから今のうちに使ってくれ」

仁之介が懐から一ゴールドを出すと若葉に手渡す。

「助かります」

茜も若葉の前にやって来る。そしてポケットロンを差し出す。

「これは?」

若葉が不思議そうに差し出されたポケットロンを見る。

「何かあった時は電話を下さい。すぐやって参りますわ。

隠れ里の電話番号は、その中に入っていますから」

「・・・ありがとうございます」

何か納得できないような顔で若葉がポケットロンを受け取る。

「電話番号があるとは進んでおるな。そなたの隠れ里は」

白房を抱きかかえ白耀姫が感心したように頷く。

(ぼくもはじめてきいたよ)

「俺達、犬神の一族は、元々を辿れば犬だからな。人間に近い所に住んでいたおかげで

そういった新しい技術や道具を取り入れるのに何も違和感がないのさ」

仁之介が自慢するように語る。

「やはりお主達、自分が犬神だという自覚が無いな」

白耀姫が断定するように言った。

(んー。よくわかんない)

白房が首をかしげる。

その様子を仁之介が大口を開けて豪快に笑い茜が微笑む。

一通り笑った後、仁之介が茜の方を見て言った。

「じゃ、そろそろ帰るか。姉貴。行こうぜ」

「そうね。白ちゃん。元気でね」

ばいばいと手を振ると仁之介と茜の姿は、陽炎のように消えていった。

「さて。それじゃ母屋に戻りましょう」

若葉が白房に告げる。

(はーい)

「うむ」

若葉が怪訝な顔で白耀姫を見る。

「なんじゃ?」

「あなたもついて来るんですか?」

「うむ。私は、白房の保護者じゃ。当然、同じ場所に住むのが道理であろう」

白耀姫が至極当然といった態度で言った。

「私は、聞いていませんが」

若葉が冷たく言い放つ。がらがらと音を立て白耀姫の態度が崩れ目に見えて焦り出した。

「もう一人くらい居候が増えてもいいではないか」

「いりません」

若葉がきっぱりと拒絶する。

「白房。お主も何か言うのじゃ。このままだと私達は、路頭に迷うぞ」

白耀姫が慌てて白房をけしかける。

「白ちゃんは、別に構いません。先ほど養育費も頂きましたから」

「むう」

白耀姫が言葉につまり困ったように唸る。

(ねぇねぇ、わかばちゃん。はくようきもいっしょにとめてあげてよ)

白房が若葉に訴えかける。若葉が仕方ないという風にため息をつくと言った。

「食費は、全額あなた持ちでよろしければ居候を認めます」

「むう。仕方ない。それで手を打とう」

白耀姫が仕方なく頷く。どことなく困ったような表情だ。

(どうしたの?)

白房が白耀姫を見上げる。白耀姫が腕を組みながら額に皺を寄せながら言った。

「うむ。私は、この絶大な妖気と神気を維持するために食物を大量に摂取せねばならぬ」

白房が頷く。白房は、白耀姫の食べっぷりを目撃しているので素直に納得した。

「しかし私は、この世界において食い扶持の稼ぎ方を知らぬ。

このままでは、飢え死にが待っておる。さて、どうしたものか?」

白耀姫が首を捻り考え込む。白房も一緒に考え込む。

しばらくして白房が白耀姫にある事を告げた。

白耀姫は、白房を抱き上げうれしそうに笑った。

 夜の闇が世界を支配する時間には、百鬼夜行が跋扈する。

今正に一人の女性がその餌食にならんとしている。

「そこまでじゃ!」

夜の闇を切り裂くような声と闇に混じらぬ白く輝く姿。

「天網恢恢、疎にして漏らさず!そちらの悪行そこまでじゃ!」

白く輝く人影が夜の闇を切り裂き駆ける。

百鬼夜行を蹴散らすその姿は、まさに猛虎の如し。

逃げ出す百鬼夜行の先に小さな白い姿が立ちはだかる。

そして小さな体を大きく伸ばし咆哮を上げる。

その咆哮は、百鬼夜行を脅え竦ませる。

「白房。お主とならばどんな敵が来ても負けることはない」

(うん。はくようき。ぼくたちは、だれにもまけない!)

二つの白い姿は、夜の闇を切り裂き朝の光のようにまぶしく輝き続ける。


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