Hi’z 5 Errand〜はいず 5 えらんど〜

トーキョーN◎VA-The-Detonation

小説

シーン3“アルテミス”〜記憶喪失の女狩人〜

トーキョーN◎VA中央区オフィス街。

その名の通りN◎VAの大企業のほとんどがここに集まっている。

中心には、日本の唯一の出入り口である高さ三千メートルの巨大ビル・イワヤトがそびえたっている。

イワヤトを守るため中央区には、日本の治安維持軍であるN◎VA軍が進駐し
特務警察ブラックハウンドも厳重な警備を強いているためN◎VAの中で一番治安がいい。

叢雲 空は、このホワイトエリアの高級マンションに住んでいる。

「朝だ! 朝だ! 朝だ! 早く起きろ! グークが来るぞ! ロックンロール!」

突然ホームコンピューターDAKの中で三匹の迷彩服を着た兎ががなりたてる。

腰だめに構えたマシンガンまで乱射を始めた。

その騒音を聞き叢雲は、眠りの世界から現実の世界に戻された。

人に幼く見られがちな顔を不機嫌と睡魔の入り混じった表情で飾っている。

ベッドから上半身を上げる。形のいい胸からシーツが落ち腰の部分で折り重なる。

「ボタ! ラッツ! パッキー!」

叢雲がDAKにいる三匹の迷彩服を着た兎の名前を不機嫌そうに呼ぶ。

三匹の迷彩服を着た兎は、黙り込む。

「もう少し優しく起こしてよ。今、何時?」

「1037です。グークは、すでに行動を開始しています」

中央の灰色と白い毛の兎が礼儀正しく答える。名前は、パッキー。三匹の兎のリーダーだ。

「グークは、ストリートのカプセルホテル・ハノイに潜伏中DA」

パッッキーの右に控えていた白い毛の兎が口を開く。名前は、ラッツ。

「グークの名前は、ヒドゥンタイガー。フリーランスの暗殺者。奇襲と隠密が得意技。

条件は、生死を問わず。賞金は、一ゴールドです」

パッキーの左に控えていた背中に通信機を背負った黒い毛と白い毛の兎が続いて口を開いた。

名前は、ボタ。そのまま言葉を続ける。

「遠距離からの狙撃による射殺が効果的です。

気象情報と周辺の地図及びヒドゥンタイガーの情報と画像は、ポケットロンに送信済みです。

後でご覧になって下さい」

「ありがとう」

叢雲は、三匹の兎の報告を聞くとベッドから立ち上がり外に出る支度を始める。

叢雲 空は、賞金稼ぎを仕事にしている。賞金がかかった凶悪犯を警察の代わり追いかける。

凶悪犯を生かすか殺すかは、条件と状況次第だ。

叢雲は、この一ヶ月でまたたくまに名をあげた賞金稼ぎだ。

今では、アルテミスというあだ名までついている。

銃の腕は、一流と言っても過言ではない。

「他に御用は、ありますか?」

パッキーが尋ねてくる。

「そろそろ君達の正体を教えてくれないかな?」

叢雲は、長い黒髪を赤いリボンで頭の後ろでまとめポニーテールにしながら尋ねた。

「軍規に触れます」

パッキーが三人を代表して口を開く。

「教えられないってことね。ボクのことは?」

「同様です」

叢雲には、一ヶ月以上前の記憶がない。いわゆる記憶喪失だ。

自分の名前は、思い出せたがそれ以上のことは、思い出せなかった。

IDは、存在しなぜかホワイトエリアに住居があり貯金も生活するのに困らないくらいあった。

賞金稼ぎを始めたのは、ある日この三匹の兎が現れ過去のことを知りたいなら賞金稼ぎをすればわかると言ったからだ。

この三匹の兎は、今日の様に唐突に現れ賞金首の情報を話すこともあれば
何の特にもならないおしゃべりをして帰っていくこともある。

記憶喪失の叢雲にとって唯一頼れる存在だった。

「わかった」

吐息して叢雲は、追求をあきらめる。

「他に御用がないならR&Rをもらえますか?」

「許可するわ」

「ありがとうございます」

三匹の兎は、敬礼すると画面から消えていった。

代わりにDAK内に本来のバディである黄色のヒヨコが現れる。

「ピーすけ。出かけるからセキュリティよろしくね」

「いってらっしゃい。ぎゃわ」

DAK内で黄色のヒヨコがデフォルメされた羽を振る。

黒いスーツに身を包み叢雲は、家を出た。銃は、持っていない。

ホワイトエリアで銃を持ち歩くことは、不可能に近い。銃を持ってホワイトエリア入ろうとしてもホワイトエリアを巡回する警察かN◎VA軍に発見されると没 収される。

それでもこの不可能を可能にし犯罪やテロを行う者は、絶えない。

アサクサの検問を通り隅田川を渡る。

すねに傷を持っている人々が集まるこのストリートで黒のスーツに身を包んだ叢雲のいでたちは、かなり浮いている。

行き交う人々にぶつからないように足早にストリートの奥へ進む。

周辺の地図を見るとご丁寧に×印で狙撃に最適な場所まで記してあった。

三匹の兎に感謝しながらその場所に急ぐ。

「ここね」

今にも崩れそうな雑居ビル。エレベータは、電源がないので使用不能。

二段飛ばしで駆けけ上がりドアを開け三階の屋上にたどり着く。

そこには、最新式ボルトアクションスナイパーライフル・LR67が置いてあった。

「相変わらずだね」

あの三匹の兎が持ってくる仕事は、情報から装備まで全て用意が整っている。

叢雲の仕事は、銃爪を引き賞金首を撃つだけだった。

ボルトを引き銃弾が装填されているか確認する。

装填されているのを確認しIANUSからLR67へ結線する。

叢雲の右目にスコープで見た画像が浮かぶ。

スコープは、衛星リンクされているので画像は、鮮明だ。

LR67を構え膝立ちになりカプセルホテル・ハノイの入り口に照準する。

遠くの世界をすぐ掴むことができる所まで手繰り寄せているような感覚。

叢雲は、このスコープから見た世界が好きだった。

ヒドゥンタイガーが入り口に姿を現した。

野性的な顔立ちに無駄な肉がついてない肉体は、俊敏な猫科の動物を思わせる。

叢雲は、三匹の兎が送ってきた画像をIANUSに命じて左目に投影し確認。

賞金首に間違いないと判断。まばたきして左眼の画像を閉じる。

照準をヒドゥンタイガーの心臓に合わせIANUSであらゆる自然現象から生じる誤差を演算する。2秒で答えが出る。

微妙に狙いに修正を加え銃爪をゆっくりと絞る。

慌てて力任せに銃爪を引くとそれだけで誤差が出る。

少しの誤差でも遠くの目標を狙っている場合は、最終的に大きな誤差となる。

銃爪を絞りきる。バレル内で銃弾は、加速し音速を超え標的と向かう。

ヒドゥンタイガーが殴られたように地面へと弾き飛ばされる。

叢雲は、右目でその様子を確認。

「ジャックポット!」

標的に弾丸が当たった喜びを口に出すと同時にボルトを引き次弾装填。

スコープの倍率を上げ地面に倒れているヒドゥンタイガーの様子を確認する。

地面に広がる赤い血が見える。ヒドゥンタイガーは、ぴくりとも動かない。

心臓に確実に当たり一撃で倒したのだ。

突然倒れたヒドゥンタイガーの周りに人が集まり始めている。

叢雲は、立ち上がりLR67を持って現場に急ぐ。

自分が現場でどのように犯人を倒したか報告しないと賞金は、貰うことができない。

再び階段を二段飛ばしで下りながら現場に向かって走る。

「どいて! バウンティハンターよ!」

バウンティハンター協会発行の鑑札を振りかざしながら現場に集まるやじ馬の輪を突破する。

現場にたどり着きヒドゥンタイガーを確認する。

立てられたコートの襟によって顔が隠れている。

LR67の銃口で襟をどける。そこから見えた顔に叢雲が驚きの声を上げる。

「なっ! 何これ?」

地面に倒れているのは、ショーウィンドに衣服を飾るために使われるマネキンだった。

弾丸は、マネキンの心臓を見事に貫通している。

叢雲は、地面にしゃがみ指で血に触れる。

本物の血とは、まったく違う手触り。血糊だった。

「じゃあ、本物は、いったいどこに?」

叢雲が周囲を見わたすがヒドゥンタイガーの姿を見つけることはできない。

虎は、獲物を狩るため草の中にその身を伏せた。


 ありとあらゆる情報が光の速さで行き交うウェブ内に三匹の兎の住む兎小屋は、存在する。

ボタは、だらしなく足を投げ出し叢雲の仕事の様子をテレビで見ていた。

テレビには、階段を駆け下りる叢雲の様子が映っている。

ボタは、リモコンでチャンネルを切り換えヒドゥンタイガーの姿を映す。

チャンネルを切り換えヒドゥンタイガーの様子を映す。

ボタは、慌てて立ち上がった。

「まずいよ。パッキー。彼女、奴を完全に倒したと思ってるよ」

ボタがあたふたとパッキーの元に駆け込んでくる。

パッキーは、兎が表紙の雑誌から目を離さず答えた。

「今は、R&R中だ。仕事の時間じゃない」

「そうだZE。ボタ」

バドワイザーの缶を片手にラッツもパッキーに賛成する。

「でも奴、まだ死んでないんだよ。ホラ」

テレビに地面に倒れたヒドゥンタイガーの画像が拡大される。

そこには、マネキンが倒れていた。

「じゃあ、奴は、何処に行ったんDA? ボタ」

バドワイザーで喉を潤しながらラッツが尋ねる。

ボタがチャンネルを切り換えテレビにやじ馬の中に隠れているヒドゥンタイガーを映し出す。

目の奥に殺意の暗い光が宿っている。

「今は、やじ馬の中に紛れてる。彼女が来たら殺すつもりだよ」

「ナンバーテンDA。彼女が死ぬと政治問題だぞ。どうする? パッキー」

事態の深刻さにようやく気がつきラッツは、バドワイザーの缶を遠くに投げ捨てる。

パッキーも雑誌を投げ捨て考え込む。その間に叢雲は、やじ馬の輪の突破を始めた。

「コマンドポストに火力支援を要請しようよ。まだ間に合う」

「駄目だ。やじ馬まで巻き込んじまう」

ボタの提案をパッキーは、否定する。

「近くにいる腕利きのボディガードを探して彼女を守ってもらうように依頼しようZE」

ラッツが横から口を挟む。

「そんな都合よくボディガードが歩いている筈ないだろ」

ボタがラッツの提案を手を振って否定する。

「いや。バドワイザー1ケース賭けてもいいZE。きっといる」

「ラッツ。その根拠は?」

ボタとラッツのやりとりを黙って聞いていたパッキーが口を挟む。

「パッキー。忘れたKA?彼女は、お姫様DA。きっとお姫様を守る騎士が都合よく歩いている。

ディズニー映画じゃそう決まってるんDA」

ラッツの言葉にパッキーが苦笑する。

「他にいい案もなさそうだな。じゃあ、急いで騎士を探せ! ロックンロール!」

三匹の迷彩服を着た兎は、騎士を探すべく兎小屋を飛び出しウェブの四方に散らばっていった。

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