Hi’z 5 Errand〜はいず 5 えらんど〜

トーキョーN◎VA-The-Detonation

小説

シーン7 強襲

アズーリとネロは、アサクサの隠れ家にいた。

ネロは、隠れ家について緊張が解け今までの疲れがでたのかベッドで眠っている。

アズーリは、家のセキュリティを確認した後、ベッド傍の椅子に座り自身も体を休める。

特に何事もなく時間は、過ぎ去っていく。

無事に一日が過ぎ去るとアズーリが思った時、アズーリが家の近くで停車する車のブレーキ音と人間の殺気に気がついた。
それと同時に少年の眠りを妨げないようにマナーモードにしてあったポケットロンが懐の中で震えた。

番号を見てアズーリが一瞬だけ眉をしかめる。

その番号は二度とかかってくることがないと思っていた番号だった。

ポケットロンのボタンを押す。音声通知のみで画面には何も映らない。

ポケットロンから聞こえてきたのは、アズーリにとって懐かしい声だった。

「久しぶりだな」

ローマなまりのイタリア語だった。落ち着いた静かな声だった。

「ああ」

アズーリもイタリア語で答える。

「用件だけ言う。護衛対象をこちらに渡してもらおう」

「断る」

「命令だ。スクデット」

「名誉を汚した者にスクデットは、従わない。わかっているはずだ」

「俺個人の頼みでもか?」

沈黙が流れる。アズーリがポケットロンを握る手に力を込める。アズーリが沈黙を破る。

「同様だ。俺がスクデットの名と紋章を持っている限り。これは、スクデットの名と紋章と共に受け継がれる誓いと名誉だ。俺が破るわけにはいかない」

アズーリの答えにポケットロンからため息と共に相手の呟きが聞こえる。

「伝統というわけか・・・」

呟きには嘲るような響きがあった。相手が言葉を続ける。

「俺達は、災厄によって青い空と青い海を奪われた。俺達は、青い空と青い海を知らずに育った。
だが俺達は、青い空と青い海があった頃の誓いと名誉を守らなければならない。おかしなことだと思わないか?」

男の声が親しげに過去を懐かしむようにアズーリに語りかける。

それは、かつて何度も何度も聞いた言葉だった。

その度にアズーリの思い出の中に存在する人物は、同じ言葉で反論した。

アズーリは、無意識に首のマフラーを握り締める。感情を押し殺した声で答える。

「いつか必ず私達は、青い空と青い海を取り戻す。たとえ取り戻せなくても私達は、青い空と青い海を見つけ出す。

それは、きっと変わらぬ誓いと名誉の中にある」

アズーリの答えは、思い出の中に存在する人物と同じ言葉だった。

そして無意識にマフラーを握り締めていたことに気がつくとゆっくりとマフラーから手を離す。

「お前は、青い空と青い海を取り戻したか? それとも見つけ出したか?」

「ああ。俺は、青い空と青い海を手にいれた」

「それは、違う。ロビー。お前が手に入れたのは、赤い宝石だけだ」

「アレックス。お前がどう思おうとも俺には、この生き方しかできなかった」

「それが言い訳か?」

アズーリの声は、静かだった。だがロビーには、アズーリが怒っていることがわかった。

怒りの感情を隠そうとする時アズーリは、静かな声で答える癖を持っていることをロビーは、昔から知っている。

「過ぎ去ったことをいつまで話し合っても仕方がない。大事なのは、現在だ。アレックス。

これが最後だ。ネロをこちらに引き渡せ。さもなければ実力行使にでる。

すでにそちらの居場所は、わかっている」

「答えは、一緒だ」

「わかった。さようなら。弟よ」

「ああ。さようなら。兄さん」

アズーリは、ポケットロンを懐に入れるとネロを起こす。

ネロも即座に家を囲む殺気に気がつき隠し持っていた単分子ナイフを取り出し構える。

その様子を見てアズーリが口を開く。

「お前が戦う必要はない」

「スクデット。僕も戦います」

「子供が手を汚す必要はない。手を汚すのは大人の役目だ。一ついいことを教えてやろう」

ネロが真剣な表情でアズーリの顔を見る。

「イタリアの男が最初に手を汚すのは、女を守るための戦いの時だ。

これがいい男になる最初の条件だ」

冗談なのか本気で言っているのかわからないアズーリの言葉にネロが戸惑った表情を見せる。

アズーリがその様子を見て苦笑する。

「お前がしたいことをもう一度よく考えろ。そうすれば俺の言葉の意味がわかる筈だ」

それだけ言うとアズーリは、クリスタルウォールを展開し左手に構え首からマフラーを外し右手にマフラーを握る。

「俺の傍から離れるな。行くぞ」

アズーリが扉を開け先頭に立つ。その後ろをネロがついてくる。

廊下にでると同時に銃弾の雨がアズーリに降り注いだ。

アズーリは、クリスタルウォールに体を隠し銃弾の雨から我が身を守る。

そして半透明の盾の影から襲撃者の様子を見る。

襲撃者は、トレンチコートに黒のスーツ、そして右手にサブマシンガンという映画に出てくるようなマフィアの姿だ。

銃弾は、全てクリスタルウォールに弾かれ床に落ちた。

マフィアが空になったマガジンを床に捨て代わりのマガジンを取り出す。

一瞬の隙を逃さずアズーリが右手のマフラーが動く。

マフラーが獲物を狙う蛇のようにマフィアの首に向かって行く。

マフラーは、マフィアの首に巻きつき獲物をしとめる蛇のように徐々に首を締め上げる。

マフィアがマシンガンを捨てマフラーを解こうと首に巻きついたマフラーに手を伸ばす。

マフィアの力にもマフラーは、解けず首を締め上げ続けついに鈍い音と共にマフィアの首の骨が砕ける。

マフラーが蛇のように動き再びアズーリの手の中に戻る。

「ファミリーの連中だな。シンボリ・デ・ロッソではないようだ」

アズーリの言葉にネロが頷く。

アズーリとネロは、廊下を進み裏口を目指す。だが裏口目前でアズーリが足を止める。

裏口の前に立ちはだかるマフィア達がアズーリに気がつきサブマシンガンの銃爪を引く。

マズルフラッシュの光が瞬きサブマシンガンが吼える。

アズーリは、クリスタルウォールで自分に降り注ぐ銃弾の雨を防ぎマフラーを振るいネロを狙う銃弾を弾き落とす。

銃弾の雨が止む。

マフィア達は、空になったマガジンを床に落とし新しいマガジンを懐から取り出す。

その隙をつきアズーリのマフラーがマフィアの一人を捕える。

アズーリは、マフィアを引き寄せ自分の肩でマフィアの腹を強打。

激痛と打撃の衝撃で首に絡んでいたマフラーが締まりマフィアは、一瞬で気を失う。

そのままアズーリは、マフィアを肩に担ぐように載せると裏口へ突進する。

マガジン交換を終えたマフィア達がサブマシンガンを構える。

構わずアズーリは、突進する。マフィア達が発砲をためらう。

アズーリを撃てば仲間に当たってしまう。

アズーリが担いでたマフィアを下ろすと同時にその背中を横蹴りで蹴り飛ばす。

マフィアは、仲間の方に吹っ飛んでいくと仲間を巻き込み全員が転倒する。

アズーリが駆け転倒しているマフィア達を蹴りの一撃や獲物を見つけた蛇のようにマフラーが動き次々と
マフィア達を無力化していく。

マフィア達を全員の無力化を確認しアズーリとネロは、裏口に急ぐ。

アズーリが裏口の扉を開ける。同時にアズーリの耳が発砲音を感じ取る。

判断するより早くネロを突き飛ばす。爆風にアズーリの体が後ろに飛ばされる。

「スクデット!」

ネロが爆風に飛ばされたアズーリに近づく。アズーリの顔を覆っていたミラーシェードが砕けその下に隠れていた青い瞳が露になっている。

ネロの声に気がつきアズーリが立ち上がる。

クリスタルウォールは、砕けガラスの破片のように地面に散らばっている。

アズーリの体を守っていたコートは、破片により切り裂かれて無残な姿になっている。

「グレネードまで持ち出してくるとはな」

アズーリが自嘲気味に呟く。

「怪我は、ないか」

アズーリが尋ねるとネロは、頷いた。アズーリが突き飛ばしたおかげでネロは、爆風の影響も受けずグレネードの破片に
当たることもなかった。

ネロに傷一つついてないことを確認するとアズーリは、自分の体を確認する。

IANUSに命じて自分の体の傷ついているところをリストアップさせる。

幸いクリスタルウォールを持っていた左腕以外は、軽い傷ですんでいる。

左腕から大量の出血があることをIANUSが告げる。アズーリは、左腕に目をやる。

どうやら左腕に破片が深く食い込んでいるらしい。動かすと激痛が走る。

IANUSに命じて痛覚をカットする。コートの袖が滲み始めた血で赤く染まり始める。

「裏口から逃げるのは、無理だな」

グレネードによって起こった炎が行く手を阻んでいる。入り口も恐らく同じだろう。

「スクデット」

心配そうにネロが声をかける。

「心配するな」

アズーリは、ボロボロになったコートを脱ぎ炎から守るためネロの頭からすっぽりと被せる。

青い瞳に決意の光を宿し炎越しに見える敵と向かいあう。

「ファンタジスタの力を見せてやる」

アズーリの言葉に答えるようにマフラーが青い槍に変化した。



 鳳翔は、オペレーターより連絡を受けアサクサに急いでいた。

通報によると何者かが家を取り囲み発砲しているらしい。

アクセルを緩めることなく突き進む。

犬の唸り声のような排気音が静かな住宅街に響きわたる。

「見つけた! あそこかっ!」

火災が起こっているらしく黒煙が上がっている。

ターボユニットを起動させ更にムラマサを加速する。

鳳翔は、現場までの最短距離を思い浮かべターボユニットによって加速し暴れ馬のようなムラマサをいとも簡単に従わせ現場へと突っ走る。目前に現場が迫って いた。

目の前に見張りらしき拳銃を持った男が二人いる。

男二人は、鳳翔に気がつき発砲してくる。

鳳翔は、ためらうことなくアクセルを吹かし加速。男達二人にむかって突撃。

目前でムラマサの前輪を上げまず一人を前輪で押し潰すと左手一本でムラマサを操り右手で懐からBBマキシマムを取り出し
迷うことなくもう一人の男めがけ発砲。

弾丸は、確実に命中。男が吹っ飛ばされていく。あっさりと二人とも完全にノックアウト。

「フリーズ! ブラックハウンドだ! 大人しくお縄につけ!」

鳳翔が辺りに響きわたる大声で名乗りを上げる。

背後から車の駆動音が聞こえる。鳳翔が後ろを振り向く。発砲に気がついたのだろう。

黒塗りのリムジンが鳳翔めがけ突っ込んでくる。鳳翔がその様子を見て不敵に笑う。

運転手に見えるように右手の中指だけを立て続いて挑発するように手招きする。

そしてムラマサのアクセルを吹かしリムジンから逃げ始める。

リムジンは、仲間二人を跳ね飛ばしさらに鳳翔を追いかける。

跳ね飛ばされた男達をバックミラー見て鳳翔は、舌打ちする。

振り向いて再びリムジンの運転手に向かって右手の中指だけ立て鳳翔は、叫ぶ。

「バカヤロー! 証人を殺すんじゃねぇよ! 始末書書くのは俺なんだぞ! 

このチキンめ!」

完全に自分の都合だけで相手を罵る。相手の返答は、過激だった。

後ろの窓が開きグレネードを持った男が顔を出す。グレネードが発射される。

鳳翔は、巧みなステアリングでグレネードかわす。

次々と放たれるグレネードからムラマサを左右に振り回避していく。

目の前にコーナーが迫る。鳳翔が体を左に倒し加重移動。

左膝を地面にこすりながら限界ギリギリのスピードでコーナーを駆け抜ける。

リムジンも後輪を滑らせコーナーを曲がってくる。

バックミラーでその様子を見て鳳翔がうれしそうに口笛を吹く。

「いい腕してんじゃねぇか! 面白れぇ! とことんやろうぜ!」

水を差すように本部より通信が入る。

鳳翔は、舌打ちしながらヘルメットの通信機をONにする。

「鳳翔巡査。現場につきましたか?」

「今、犯人とチェイス中だ! いいところだから邪魔すんな! 邪魔したら後で泣かす!」

オペレーターが一瞬沈黙する。

「鳳翔巡査。現場には、まだ襲撃者達が残っているようです。それに火災も起っています。家の中には、まだ人がいます。

速やかに襲撃者を排除してください。

そうしないと消防隊が現場に入れません」

「そんなこと知るか! 俺の楽しみの邪魔すんな! お前、後で絶対泣かす!」

完全に職務を忘れチェイスで熱くなった精神状態のまま鳳翔が言い返す。

「冴子課長。助けてください。鳳翔巡査が言うこと聞いてくれません」

オペレーターが情けない声を上げて助けを求める。通信機から届く声が変わる。

「鳳翔巡査。命令です。速やかにチェイスをやめ現場に向かいなさい。

私との約束を守りなさい」

冴子の冷静な声が鳳翔の熱くなった精神を冷やしていく。鳳翔が不満そうな唸る。

それは、まさにあだ名とおり犬の唸り声のようだった。

「わかりました! 速やかに現場に向かいます! 以上っ!」

通信機のスイッチを切る。バックミラーに目をやる。

リムジンは、五メートルほど離れてついてきている。

十メートル先に再びコーナーが姿を表す。

「しょうがねぇ。もう少し楽しみたかったが約束は、約束だ」

後ろのリムジンを突き放すため更にアクセルを吹かしコーナーへ突っ込んでいく。

そしてフルブレーキをかけ右足を軸にしコーナー手前でスピンターン。

向きを変え終わると鳳翔は、アクセルを吹かしリムジンに向かって突進。

リムジンとの距離がぐんぐん縮まる。リムジンの方もスピードをあげ突っ込んでくる。

鳳翔が勝利を確信したように声に力を込め叫ぶ。

「奥の手を使わせてもらうぜ! 風よ!」

鳳翔の周りに風が集まり渦巻き始める。

激突の寸前、風の力で起った揚力によりムラマサが浮き上がりリムジンを飛び越える。

リムジンは、そのままコーナーに突進。

曲がりきれず壁に激突した。鳳翔は、着地も見事に決めるとそのまま現場に向かう。

通信機のスイッチをONにし本部を呼び出す。

「鳳翔だ。現場は、どうなっている」

「火災が悪化しています。このままだと他の住居に燃え移る可能性があります」

「襲撃者達はどうなった?」

「中にいる住人と戦闘中のようです。火災でDAKが機能しておらず近くの公衆DAKからの映像からは、よくわかりません」

「わかった。気象図を俺のIANUSに送れ」

「はぁ。どうするんですか?」

鳳翔の意図がわからずオペレーターが不審そうな声を上げる。

「いいからとっとと送れ! 説明してる暇はねぇ!」

「は・・・はいっ!」

鳳翔の剣幕にオペレーターは、慌てて気象図を鳳翔のIANUSに送る。

鳳翔は、気象図が送られてきたのを確認するとIANUSに運転を任せ気象図を見る。

「これがたぶん高気圧・・・だよな。じゃこの変な線は、何だ?」

ぶつぶつと独り言を呟きながら二秒ほど考える。

頭の中にある理科の授業内容を必死に思い出す。

「ええい。面倒だ! こいつを呼んじまえ!」

考えるのが面倒になった鳳翔は、行動に移った。

「風よ! お前達の親玉を連れて来い!」

鳳翔が力を込め天に叫ぶ。風は、鳳翔の体の周りを渦巻き天へ翔け上がった。

その日、トーキョーN◎VAを異常気象が襲った。

トーキョーN◎VAの近くにあった台風六号が突如、進路を変え更に史上に例がない

猛スピードでトーキョーN◎VAを直撃した。

この異常気象に翌日の気象予報士達は、説明に苦慮し一部の学者達が頭を抱えた。

風が吹き荒れ雨が視界を遮るほど降り始めた。

鳳翔は、視界が遮られても気にすることなく猛スピードで現場に急ぐ。

「やりすぎたかな。まっいいか。どうせ誰も俺の仕業だと気がつかないだろうし。

火災も消えるからちょうどいいだろ」

異常気象を起こした張本人は、お気楽に言うと現場に突入する。

鳳翔は、住居の入り口でムラマサを止める。鳳翔の予想通り火災は、消えている。

ムラマサから降りると後部に積んであったショットガンとニューヨーク市警時代SWATの手伝いをした時から積みっぱなしになっているクリスタルウォールを 取り出す。

「そういやおやっさんクリスタルウォールの数が足りねぇって言ってたな。俺が持っていたままだったのか。悪いことしたな」

右手にショットガンを左手にクリスタルウォールを構えると入り口に走りこむ。

入り口は、鍵が掛かっている。仕方なく裏口に回りこむ。

裏口には、襲撃者達の死体が転がっていた。銃声。

素早く鳳翔がクリスタルウォールの後ろに身を隠す。

弾は、飛んでこなかった。こちらを狙ったものではなかったらしい。

クリスタルウォールに身を隠しながら鳳翔は、銃声のした方を見る。

そこには、青い槍を振るい弾丸を弾き落としそのまま襲撃者を倒す騎士の姿があった。

「フリーズ! ブラックハウンドだ! 手を上げろ!」

鳳翔が騎士に声をかけショットガンの銃口を向ける。騎士は、静かな声で答えた。

「俺は、ボディガードだ。依頼人を守っただけだ」

「わかった。今からそっちに行くから動かずに待ってろ」

鳳翔は、ショットガンを下ろすと騎士に近づく。

騎士は、傷だらけだった。

特に左腕は、自分の血で真っ赤に染まっている。

「ブラックハウンドの鳳翔だ。今、救急車を呼んでやる」

「アズーリだ。助かる」

アズーリが淡々と言った。騎士らしく優しい青い瞳をしている。

「依頼人は、何処だ?」

「家にいる」

鳳翔がそれを聞き裏口から家に突入する。

扉は焼け落ちているので鳳翔は、苦も無く家の中へ入っていった。

警戒しながら部屋を一つずつ確かめていく。

鳳翔は、部屋の隅に蹲っている影を見つけた。

恐らくアズーリの依頼人だろう。守られるようにコートに包まれている。

顔は、よく見えないが少年のようだ。

「ブラックハウンドだ。もう大丈夫だ。安心しろ」

少年がコートから顔を出す。

鳳翔には、少年の顔になぜか見覚えがあるような気がした。

鳳翔は、気にせずとりあえず手を引き外に連れ出す。

「スクデット!」

少年が雨に濡れるのも構わずアズーリの所へ走っていった。

アズーリの持っていた青い槍は、消え去っており青いロングマフラーを首に巻いている。

「鳳翔より本部。被害者を確保。襲撃者は、全員死亡。

怪我人がいるから救急車を二秒でよこせ」

「鳳翔巡査。被害者のデータを照合しますので被害者の画像を送ってください」

「了解」

鳳翔が目で見た画像をIANUSを通して本部に送る。

二秒後オペレーターより通信が入る。

鳳翔は、仕事は終わったとばかりに懐からたばこを取り出し吸い始める。

雨も小ぶりになってきた。

「ほ、鳳翔巡査。何でのんびりしてるんですかっ?」

オペレーターがかなり慌てている。

「そっちこそ何を慌ててんだ」

鳳翔が紫煙を吐き出しながら答える。

「本当に気がついてないんですかっ?」

「だから何に? 早く言わないと後で泣き止んだ後更に泣かす!」

鳳翔は、仕事を終えたいい気分を邪魔されオペレーターに噛みつく。

「冴子課長。もう鳳翔巡査の相手するのいやです。

課長の口からガツンと言ってやってください」

オペレーターが泣きをいれる。しばらくして冴子の声が通信機から届く。

「鳳翔巡査。その子は、君の担当している事件の犯人でしょう! 早く確保しなさい!」

「ああ。だから見覚えあったのか」

のんきに鳳翔が答える。そして自分の言った言葉を理解し慌てる。

「そりゃ逮捕しなきゃまずいじゃねぇか! オペレーターめ! 後で絶対泣かす!」

「気がつかない君が悪いんでしょう! 確保できなかったら減給処分にします」

「勘弁してくれ」

そう言うと吸殻を投げ捨て鳳翔は、慌ててアズーリと少年の元へ向かう。

「悪いがそっちの子を逮捕しなきゃならん。こっちに渡せ」

二人とも逃げずにまだ留まっていた。

「俺の判断では引き渡すことはできん」

アズーリは、そう言うとマフラーを再び青い槍に変え構える。

「やる気か。お前だけが力を持っているわけもないんだぜ。風よ!」

鳳翔の声に答えるように風が鳳翔の体の周りを渦巻き始める。

「お前もファンタジスタか。さっきの台風もお前の仕業か?」

「ああ。本当は、雨雲だけ呼ぼうと思ったんだがな面倒になって台風にしといた。

悪かったな」

「いや。おかげで助かった。礼を言う。だがそれとこれは別だ」

「そうか。じゃ! やるか!」

鳳翔が右拳を握ると風が右拳に集まり渦巻く。アズーリも槍を構える。

「待って!」

少年が声を上げる。鳳翔が放とうとしていた右拳を止める。

「僕、警察に行きます」

あっけに取られた表情で鳳翔は、アズーリを見る。

「と言ってますけど」

「ならば俺も警察に行く。お前と戦う理由はなくなった」

アズーリは、青い槍をマフラーに戻す。

「そうですか。じゃ、救急車で送ってやるか待ってろ」

気抜けした表情で鳳翔は、呟き犬の唸り声のような声を上げた。

どうやら拳の振り下ろし先がなくなってしまい困っているようだ。


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