Hi’z 5 Errand〜はいず 5 えらんど〜

トーキョーN◎VA-The-Detonation

小説

シーン6〜交わる運命の矢と名誉の盾〜

叢雲は、イタリアンレストラン・カンピオーネで遅い昼食を取っていた。

初めてこのレストランに来てからすでに一ヶ月たっていた。

叢雲は、ちょくちょくとこのレストランで食事をするようになった。

トトやアズーリと会うのが主な目的だ。今日も一仕事終えてこのレストランにやってきた。

あいにく今日は、アズーリはいなかったがトトがいつものように温かく出迎えてくれた。

「お嬢様。お電話でございます」

トトがそばにやってきて叢雲に告げる。トトに礼を言うと立ち上がり電話口に向かう。

カンピオーネの電話は、今時珍しいダイヤル式の年代ものの電話だ。

落ち着いたレストランの雰囲気にとてもよくあっている。

叢雲は、受話器を取る。とたんによく知った声が耳に飛び込んできた。

「グークが来るZE! 野郎ども、ロックンロール!」

そのまま受話器を置きたい衝動に駆られたがとりあえず我慢する。

「ラッツ! いったい何の用。2秒で用件を言わないと・・・」

「けっ。お嬢様に何ができるってんDA! やれるもんならやってみR◎!」

どうやらラッツは、興奮状態にあるらしい。少し頭を冷やしてもらおう。

「ボクは、何もしないけどコマンドポストは、どうか知らないよ」

「申し訳ありません。許してください」

ラッツが降参の白旗を上げる。

この三匹の本当の主人は、コマンドポストという人物らしい。

最初この三匹が現れた時にコマンドポストの命令であなたに従うと言ったのだ。

叢雲は、コマンドポストについては何も知らないし思い当たる人物もいなかった。

時折今のように脅し文句に使う程度だ。

「で、用件は何」

「新しい賞金首の情報です。名前は、ネロ。刃物を獲物としているサイコとのことです。

先ほど賞金がかかって価格は、1プラチナム。条件は、生死問わず。

今、パッキーとボタがアサクサにて発見し追跡中です。とりあえず報告をと思いまして」

ラッツが先ほどとはまるで違う丁寧な口調で話す。

叢雲は、ラッツの言葉を聞いてようやくラッツが何故、興奮状態なのかわかった。

1プラチナムといえばかなり大物の賞金首だ。

1プラチナムあれば一ヶ月は、余裕で遊んで暮らせる。

「ありがとう。情報は、ポケットロンに送って」

「Rog」

Rogは、軍隊用語で了解の意味だ。

「装備は、LR67を用意しておいて。後、狙撃に最適な場所を探しておいて」

「Rog。用意しておきます」

「じゃあ、よろしく。ボクもすぐそちら向かうよ」

「Rog」

叢雲は、電話を切ると席に戻る。トトを呼んで昼食代を支払う。

「お仕事ですか? お嬢様」

「うん。できればアズがいてくれると助かるけど・・・」

「申し訳ありません。現在スクデットは、他の依頼で仕事中です。

お望みならば信頼できる他のボディガードを紹介いたします」

カンピオーネには、レストランの他に裏の顔がある。

それは、信頼できるとトトが認めた人間にしか教えられない。

カンピオーネ。英語読みでチャンピオンの名の通り様々な分野の腕利きの人間を紹介してくれるのだ。

またカンピオーネ経由で仕事を依頼されることもある。

叢雲もここに通うようになってしばらくしてからトトから依頼をもらいアズーリと一緒に仕事をした。

叢雲が首を振る。それに従うようにポニーテールが左右に揺れる。

「一人で大丈夫です。ちょっと大きな仕事ですが何とかなると思います」

「そうですか。ですが十分気をつけてください。死神は、誰にでも不確実な時に必ず訪れます」

「ありがとう。仕事が終わったらフルコース食べに来ますからとびっきりの料理を用意してね」

「かしこまりました。お待ちしております」

トトが丁寧に一礼する。

叢雲は、カンピオーネを後にしてアサクサに向かった。

 新宿インペリアルパークに対象の賞金首がいることを兎達から知らされると叢雲は、そこで決着をつけることにした。

兎達に狙撃場所を探させると自らも向かった。

新宿インペリアルパークは、N◎VAでも屈指の大きさを誇る緑豊かな公園だ。

内部には、美術館や動物園などの数多くの文化財がある。

もうすぐ閉園まじかの時間のため人通りは、まばらだ。

賞金首は、ベンチに座り誰かを待っているようだ。

或いは、次に殺す獲物を物色しているのかもしれない。

外見は、叢雲より幼く多く見積もっても年齢は十代後半ぐらいだろう。

おとなしそうな少年でとても無作為に人を殺すサイコには、見えない。

森林の中に身を隠してIANUSと結線したLR67のスコープの中に映る少年の姿を見て叢雲は、
そう思い銃爪を引くのをためらった。

叢雲がいつまでも撃たないのを不審に思った兎達がIANUSを通して叢雲に通信してきた。

「何をしているんだ。撃て! 撃たないといつ人間を殺すかわからないぞ!」

パッキーが決断を促してくる。

「そうだ。そうだ。早く撃たないとまずいよ」

ボタが心配そうに訴えかける。

「早くくそったれなグークをやっちまE!」

ラッツが乱暴な口調でまくしたてる。

「わかったから静かにして。邪魔よ」

兎達が黙り込む。叢雲も決心を固め標的に集中し銃爪を絞る。静かな公園に銃声が響く。

「・・・!」

銃弾は、標的には、命中しなかった。意外な人物が銃弾をはじき落としたのだ。

叢雲がその人物にLR67のスコープを向け拡大する。

間違いなくよく知った人物がそこに立っていた。

「アズ・・・」

銃弾をはじき落とした青いロングマフラーが風になびいている。

マフラーには、穴一つあいてない。アズーリは、ネロを守るように前に出る。

ロングマフラーが何者の手も借りず再びアズーリの首に巻きつく。

アズーリは、左手に持っていた折り畳み式の透明な盾、クリスタルウォールを展開すると騎士のように構え堂々とした姿で
ネロを守り次弾に備えている。

その様子に叢雲が慌てて三匹の兎達に尋ねる。

「パッキー! ラッツ!ボタ!どういうこと! どうしてアズが賞金首を守っているの?」

「わかりません」

パッキーが素直に答える。

「何ででしょう?」

ボタが不思議そうに答える。

「そんなことまで調べてねぇY◎」

ラッツが投げやり気味に答える。

「じゃあ今すぐ調べて! 早く!」

「Rog!」

三匹の兎は、そう言うとウェブの四方に散っていった。

叢雲は、身を伏せたまま木の後ろに下がると立ち上がりと木に隠れアズーリに見つからないように公園から立ち去った。

行き先は、カンピオーネ。トトならば何故アズーリが賞金首を護衛しているかわかる筈だ。

そう思うと矢も盾もたまらず叢雲は、カンピオーネに急いだ。



次弾がいつまでもこないのを見てアズーリは、 構えていた盾を下ろした。

そして護衛対象のネロに安心させるように言った。

「どうやらあきらめたようだな」

「助かりました。スクデット。来ていただけて光栄です」

ネロは、尊敬に満ちた目でアズーリを見る。

「気にするな。依頼内容に変更はないな」

「はい」

ネロの言葉にアズーリは、頷いた。

「でもスクデット。僕の依頼を何故、引き受けてくれたのですか?」

「運命に抗うためだ」

アズーリは、感情を交えず淡々と答えた。

「まずここを離れよう。この近くに俺の隠れ家がある」

そう言うとアズーリとネロは、歩き始めた。



 叢雲がカンピオーネについた時すでに日は、暮れ初めていた。

ドアを乱暴に開けレストランに飛び込む。

ただならぬ叢雲の様子に気がついたトトがゆっくりと叢雲に近づいてくる。

「どうなさいました? お嬢様。とても慌てていらっしゃるようですが」

「トト。教えて! アズは、どんな仕事を引き受けたの?」

「お嬢様。それをお教えすることはできません」

それでもすがりつくように叢雲は、言った。

「お願いだから教えて。何故、アズは・・・賞金首を守っているの?」

その言葉にようやくトトは、事情を理解する。そして重々しく頷く。

「どうやらお嬢様の仕事とスクデットの仕事が重なったようですな」

「そう・・・。ボク・・・アズの守ってる人を撃ったんだ・・・」

叢雲がこらえていた感情を我慢しきれなくなり目から涙があふれる。

「N◎VAで仕事をしていれば時としてそのようなこともあります。スクデットも気にしないでしょう」

トトは、叢雲を慰めるように言った。

「でもどうしてアズは、無差別殺人者を守っているの? アズがそんな人守るなんてボク、信じられないよ」

「お嬢様。これだけは、申し上げておきましょう。

スクデットは、その名の誇りと紋章の誓いにより名誉に反する仕事は、引き受けません」

トトが重々しく告げた。その言葉には真実しか持ちえない重みがある。

「つまり名誉に反さない理由があの賞金首にあるということ?」

「そうです。お嬢様は、それを調べればよろしいと思います」

トトが頷き年を重ねた者にしかできない優しい微笑を叢雲に見せる。

叢雲が涙を手でぬぐい微笑を見せる。

「うん・・・。そうする。教えてくれてありがとう。トト」

叢雲は、トトに抱きつき頬に軽くキスすると再び勢いよくレストランから出て行った。

「少し甘いですかね。イタリアの男としては、女性の頼みを断るのはやはり気が引けますからね。
まあ、今回は、構わないでしょう」

トトは、独白するとウェイターの仕事に戻っていった。



 カンピオーネを出た叢雲は、ポケットロンを取り出すと兎達を呼び出した。

「どう? 何かわかった?」

「調査中です」

パッキーが真面目に答える。

「頑張って調べています」

ボタが疲れた口調で答える。

「無理。わからん。もう今日の仕事は、やめ」

ラッツが投げやりに答える。

「つまり何も手がかりをつかめなかったのね」

「我々では、ウェブで探すのに限界があります。

リアルスペースで情報を探しそれを手がかりにウェブで探すやり方が最善か考えます」

パッキーの言葉に叢雲は、しばし考え込む。確かにその方がよさそうだ。

「でもボク人探しなんかしたことないよ。どうしたらいい?」

「探偵に依頼するのが一番だと思います」

「わかった。じゃあこの近くにいる腕のいい探偵を探して」

「Rog!」

兎達が再びウェブに走り出す。きっかり2秒で帰ってくる。

「見つけました。名前は、来栖 優。NIKに登録してある探偵です。新宿に住んでいます。

依頼は、今まで完璧にこなしています。しかも格安で。

1シルバーも支払えば引き受けてくれるでしょう」

「わかった。地図送って」

ポケットロンに地図が送られてくる。

叢雲は、ロボタクを止めると新宿の探偵事務所に向かった。



 薄汚れた雑居ビルの二階に来栖探偵事務所はあった。

叢雲は、階段を上り事務所へ向かう。

「こちらは、来栖探偵事務所でございます。何か御用でしょうか?」

DAKのバディである年配の執事が扉の前に立った叢雲に用件を尋ねてくる。

「探偵の来栖さんはいる? 依頼したいことがあるんだけど」

「お客様ですね。かしこまりました。ただいま主人を呼んで参ります。

少々お待ちください」

礼儀正しく一礼すると年配の執事は、画面よりいったん姿を消した。

しばらくして再び画面に現れる。

「お待たせしました。どうぞ。お入りください。主人は、奥で待っております」

扉が開く。叢雲は、中に入る。事務所の中は、応接用の机とソファがありその奥に事務机がある。

中は、整頓が行き届いているが殺風景だ。

ソファには、いささかやつれた青年が座っている。

「私が来栖です。どうぞ座ってください」

声にも張りがない。やはり腕のいい探偵だけあって忙しくて疲れているのだろう。

そう思うと叢雲の胸の中に期待が膨らむ。勧められるままソファに腰を下ろす。

「それでどのような依頼でしょうか?」

「ええと・・・人のことを調べて欲しいんだ」

叢雲は、プリントアウトした二枚の画像を机に出す。

画像に映っているのは、アズーリとネロだ。

「こっちがアズーリ。こっちがネロ」

来栖は、叢雲に断りを入れてからプリントアウトした画像を手元に持ってくる。

「それでどのようなことを調べたらよろしいのでしょうか?」

「ええと、二人の関係かな。あと居場所も知りたいな。

たぶん二人一緒の場所にいると思う」

「わかりました。二人のことで知っていることがあったら教えてください」

「アズは、ボディガードでイタリアの人。ネロは、賞金首」

「しょ、賞金首!?」

今まで冷静だった来栖が慌てふためく。その様子を不思議そうに叢雲は、見つめる。

「何かおかしいですか?」

「かなりおかしいですよ! 賞金首を洗えってあなたは、いったい何してる人ですか?」

「ボク賞金稼ぎしているんだけど」

「しょ、金稼ぎ!?」

目の前の高級そうな黒のスーツを着たどう見ても十代後半で良家のお嬢様にしか見えない少女が
賞金稼ぎと聞かされて来栖は、驚きの声を上げる。
世の中何か間違っている。

小声でそう呟き心の中で神と悪魔を罵る。叢雲は、来栖の様子を不思議そうに見つめる。

「わ、わかりました。とりあえず依頼は、引き受けます。それで依頼料ですが」

「1シルバーで引き受けてくれるって聞きましたけど」

「何処の誰がそんなこと言ってるんですかっ!? お願いですからせめて前金と危険手当を足して下さい」

来栖は、最初の冷静な探偵の姿と誇りをかなぐり捨て依頼人の少女に頼み込んだ。

前金がもらえないと依頼を果たす前に力尽きてしまうだろう。

来栖には、その確信がある。依頼を果たせる確信については、まったくない。

その時、来栖の腹の虫が大きな声で鳴いた。

「・・・お腹減ってるんですか?」

「・・・かなり」

叢雲の言葉に情けない気持ちになりながら来栖は、正直に答える。

叢雲が同情のまなざしで来栖を見つめる。

「わかりました。じゃあ前金で1シルバー。あと危険手当を1シルバー足します。

これで引き受けてくれますか?」

「ええ。引き受けます。俺INUSつけてないんで支払いは、キャッシュでお願いします」

叢雲は、1シルバー分のキャッシュを取り出すと来栖に手渡した。

「確かに。これで・・・三日ぶりに飯が食える」

「三日ぶりにご飯を食べるって・・・」

叢雲は、探偵の言葉にあきれる。

最初の期待感は、何処かへ行きこの探偵に依頼して本当に大丈夫なのだろうかという不安感の方が強まる。

「何かわかりしだい連絡しますので連絡先教えてください」

叢雲と来栖は、お互いのポケットロンの番号を交換しあった。

叢雲は、用件がすんだのであとは、探偵に任せることにし自宅に戻ることにした。

休んでおける時に休まないといざという時に困る。


 叢雲が事務所から出て行った後、来栖も事務所を後にした。

行き先は、コンビニ。三日ぶりの食事にありつくためだ。カップラーメンを三つ買った後、
事務所で餓鬼のようにカップラーメンを食べ腹ごしらえすると仕事にとりかかった。

まずNIKのデータベースにアクセスする。続いて名前を入力。

すぐさま情報が画面に写し出される。

(名前:アズーリ。性別:男。年齢:二十四。市民ランク:C−。所属:ナイトワーデン。

経歴:スクデットのあだ名で呼ばれるボディガード。

依頼に対しては、忠実だが名誉に反する行為は、依頼人であっても許さない。

腕は、信頼がおける。一年前、ローマ教皇領からN◎VAにやって来る。

ローマでの経歴は、不明。)

(名前:ネロ。性別:男。年齢:不明。市民ランク:X。所属:フリーランス。

経歴:刃物を得意とする暗殺者。数々の暗殺に関わっていると見られているが証拠は、発見されていない。

名前からイタリア系の人間と思われる。

追加情報:二十四時間前スラム街で無差別に人を殺害したサイコと認定され現在賞金が賭けられている。

賞金は、1プラチナム。条件は、生死問わず。)

「賞金1プラチナム・・・。もっと依頼料もらえばよかった・・」

来栖は、一旦画面から目を離し天井を見上げ心の中で神と悪魔を再び罵る。

そして再び画面をにらみ考え込む。まず二人の共通点は、イタリア系の人間だということ。

それ以外に共通点はない。

ボディガードと暗殺者というのは、ほぼ敵対関係にあるといっても過言ではない。

来栖は、先ほど叢雲から渡された二人が映っている画像を見る。

どう見てもこのアズーリは、ネロを守っている。

しかもアズーリは、名誉を重んじるという。そんな男がなぜ暗殺者を守るのか?

「共通点は、イタリアか。イタリアでの過去に何かあるってことか?

ローマで知り合いだったとか実は、兄弟とかか?」

来栖は、ポケットロンを取り出すと知り合いの番号を押す。

長い間待たされた後、ポケットロンの画面に眠そうに目をこする少女が現れた。

「もしもし。アルファ=オメガです」

「夜分遅くにすまない。来栖だ。ウェブで調べて欲しいことがあるんだ」

「どんなこと?」

「アズーリとネロという二人のローマ教皇領での過去と関連する情報が知りたいんだ。詳しい情報は、今から送る」

来栖は、ポケットロンを操作しアルファ=オメガに二人の情報を送る。

「わかった。それで今度は、何くれるの?」

「絵本とお菓子でどうだ?」

アルファ=オメガがうれしそうに笑う。

「それでいいよ。それじゃ今から調べて来るね。ちょっと待ってて」

アルファ=オメガは、少女のような姿をしているがその正体は、電子情報の海から生まれた史上初のAI生命体だ。

ウェブは、彼女の生まれ故郷だ。

どんな情報でも電子情報の海にある限り彼女の目から逃れることはできない。

そして彼女が見せてと頼むだけでどんなに厳重なプロテクトも成す術も無く解除され情報が彼女の目の前に現れる。

ポケットロンの画面がブラックアウトする。

2秒後再び画面にアルファ=オメガが映る。

「ちょっと時間がかかりそう。今、わかった情報だけ送るね。後、欲しい絵本のデータも」

「わかった。追加情報わかったら送ってくれ」

「うん。それじゃおやすみ」

そう言うとばいばいと手を振りポケットロンの画面から少女の姿は、消える。

来栖は、ポケットロンを操作し送られてきたデータを開く。

(名前:アズーリ。本名:不明。現在調査中。経歴:ローマ教皇領の生まれ。

ローマ教皇領でスクデットのあだ名で呼ばれるボディガードに師事しスクデット引退後スクデットのあだ名を引き継ぐ。

アズーリの意味は、イタリア語で青。

その名の由来は、青いロングマフラーを手放さない所から来たといわれている。

スクデットの意味は、イタリア語で名誉の盾。アズーリの過去については、現在調査中。)

(関連情報。初代スクデット。現在調査中。)

(名前:ネロ ローマ教皇領にいたという情報はない。名前の意味は、イタリア語で黒。)

「二人とも名前が色の名前とはね。ここに何かあるな」

アズーリとネロの情報を見終わると来栖は、最後に欲しい絵本のデータを開く。

(イソップ童話三十巻セット。イソップ童話の全ての話を当社エージェントが現地で調べ上げ収録しました。

更に災厄前の装丁と絵を忠実に再現しここに復刊!

お子様の情操教育のため一家に1セット! これを逃すと二度と手に入らない限定品です。

価格1シルバー。ご注文は、千早出版通信販売部までお電話かメールをお送りください。)

「・・・何てこった!」

来栖は、価格を見て思わず叫ぶと頭を抱えた。心の中でまたまた神と悪魔を罵る。

「・・・仕方ない。約束は・・・約束だ」

何としても今回の依頼を果たさないとならない理由ができてしまった。

そうしないと再び貧乏生活だ。再びポケットロンの番号を押す。

すぐさま画面にカウボーイハットをかぶったラテン系の伊達男が現れる。

その後ろからは、ハイテンポなリズムに赤や青のまばゆいフラッシュがちらついている。

どうやらどこかのナイトクラブにいるらしい。

耳を澄ませば女性の声らしきものも聞こえるような気がする。

「カーロスだ」

「来栖だ。少し聞きたいことがある」

「お前と俺の仲だ。アミーゴ。言ってみろ」

カーロスがカウボーイハットを指で押し上げながら軽い口調で言った。

「ストリートで名前にイタリア語で色の名前をつける暗殺者の噂か情報を知らないか」

「ああ。聞いたことあるぜ」

カーロスは、何でも屋を生業としストリートで顔が広い。

また数多くの組織を敵に回しているトラブルメイカーでもある。

その代わり耳が早く情報には信頼が置ける。

「カーライルシンジケートにそういう連中がいる。北米の方じゃなく本家の

教皇領・ローマから来て最近カーライルシンジケートに加わった奴らだ。

確か・・・バレージ・ファミリーのドンが使う連中がイタリア語で色の名前の

暗殺者だった筈だ」

「その暗殺者なんだが詳しいことわかるか?」

「ちょっと待て。アミーゴ。今思い出す。

確か連中シンボリ・デ・ロッソとかいう暗殺者の養成機関を持ってるって話だ。

二人一組で育てられて記憶を消されて色の名前を与えられるって話だ。

それで一部の腕利きには、名前の上に称号がつくらしい。

わかっているのは、グランデだったかな」

「グランデ?」

ニューヨークで暮らしていた来栖の頭の中には思い当たる英単語はない。別の言語らしい。

「英語読みでグレートだ。最近、河渡連合の幹部が立て続けに殺されてるだろ。

そのうちの殺された何人かは、こいつらの称号付きの暗殺者がやったらしい。

ま、証拠は何もない噂話だけどな」

「なるほど。助かった。夜遅くにすまなかった」

「いいってことよ。こんなこと火星じゃ日常茶飯事さ。

またトラブったら助けてくれりゃいいさ」

「・・・たまには、ハードじゃないトラブルにしてくれ。お前の持ち込むトラブルは、

いつもハードすぎる。命がいくつあっても足りやしねぇ」

「そのわりには、お互いまだ生きてるぜ。アミーゴ。じゃあな」

そう言うとカーロスは、ポケットロンの画面から姿を消した。

来栖は、ポケットロンを机に置くと今まで得た情報から推理を開始する。

イタリア語で色を表す名前がついたボディガードと暗殺者。

イタリア語で色を表す名前をつけ二人一組で暗殺者に育て上げる養成機関。

つまりアズーリとネロは、同じ暗殺者養成機関で育てられた暗殺者と考えるのが妥当だ。スクデットというのも恐らく暗殺者達の称号の一つなのだろう。

そして再び仕事をすることになりアズーリとネロは、落ち合った。

もしくは、仕事に失敗したネロがアズーリに連絡を取りN◎VAから逃げる算段でもしているというところか。

「まあ今思いつくのは、こんなところか。明日関係ありそうな所をあたってみるか」

そう言うと来栖は、事務所の奥から毛布を引っ張り出しソファの上に寝そべった。

シーン5 猟犬の帰還と委員長の受難に戻る

シーン7 強襲に進む

TOPに戻る


トップページ
日記
トーキョー N◎VA
WCCF
全選手入場!!
リンク集

Copyright© 2005-2006
子供の御使い All Rights Reserved.
Powered by sozai.wdcro