Hi’z 5 Errand〜はいず 5 えらんど〜

トーキョーN◎VA-The-Detonation

小説

シーン2 白い子犬

皆川神社は、トーキョーN◎VAの住宅街に片隅にある稲荷系の神社である。

ここには、五年前より珍しい居候がいる。その居候は、今、神社の境内で蝶を追いかけている。

名前を白房。ぴんと立った三角の耳と額に牡丹の形をしたあざを持ち
くるりとまいた尻尾を楽しそうに振っている白い子犬である。その体は、五年前と何ら変わりない。
白房は、ただの犬ではない。可愛い外見に似合わずアヤカシと呼ばれる怪物、妖怪の類なのだ。

五年前、神社の下で心細く鳴いていたのを神社の巫女の皆川若葉に拾われた。

驚いたことに白房は、テレパシーで会話する能力を持っていた。

白房が話すところによるとアストラル界にある隠れ里から抜け出して遊んでいたところ

道に迷ってこの皆川神社にやってきたとのことだった。

そして白房の一族は、あの南総犬塚八犬伝にでてくる八房を祖先とする由緒正しい犬神の一族だというのだ。
白房には、四匹の兄と三匹の姉がいてそれぞれ仁・義・礼・智・忠・信・考・悌の聖玉を受け継いでいるという。

白房自身は、義の聖玉を引き継いでいるとのことだった。

最初、白房の話に半信半疑だった若葉だったが白房の首の所に首輪のように巻いてある赤い布の結び目の所に光り輝く玉を見つけようやく納得した。

あきれたことに白房は、帰り道がわからないということなので若葉は、迎えにくるまでという条件付きで
白房を神社で普通の子犬として飼うことにした。

それから五年。誰も白房を迎えにこなかった。

白房は、そんなことを気にすることなくいつも楽しそうに暮らしている。

犬神の一族というだけあり体に秘めた妖力は、中々のもので咆哮をあげることによりアヤカシ倒すことができる。
時に退魔士の手伝いをすることもあり評判も上々だ。

犬の性質なのか義の聖玉を受け継いでいるからなのか白房は、義理堅く退魔士達から信頼されている。
そして何より依頼料が安い。

好物のビーフジャーキーをちらつかせるだけで喜んで仕事についてくるのだ。

それが最大の利点なのかもしれないがよく重宝されている。

白房は、蝶を追いかけるのにあきたのか追いかけるのをやめ狛犬の近くで寝転ぶ。

あくびを一つすると組んだ前足の間に顔をうずめ眠り始める。すぐにうとうとし始める。

白房が何かに気がついたように顔を上げる。そして何かを探すように天を見上げる。

(たしかにきこえたんだけど。きのせいかな)

白房がきょろきょろと辺りを見回す。

白房の頭の中に悲鳴が響く。白房が立ち上がり駆け出す。

(いまどこにいるの?)

白房が頭に響いた声の主にテレパシーを送る。途切れ途切れに声が返ってくる。

(中華・・・街)

白房が急に立ち止まる。しゃがみこみ脅えたように尻尾を後ろ足の間に挟む。

以前、中華街に遊びに行った白房は、広州料理店の料理人に捕まり危うく食べられそうに

なった経験がある。それ以来、白房にとって中華街は、地獄にも等しい場所なのだ。

困ったようにうろうろと円を描いて歩く。

中華街には、行きたくない気持ちと困っている人は助けなればという気持ちがぶつかりあっている。

(いまいくからまってて!)

励ますようにテレパシーを送りなけなしの勇気を振り絞り白房が駆け出す。

住宅街から中華街は、リニアでも十分かかる。白房は、裏道や人間が入れない小道を

駆け抜け最短距離で中華街を目指す。息を切らしながら中華街に入る。

ゆっくりと歩き声の主を探す。敏感な鼻が血の匂いを嗅ぎ取る。

白房が匂いの元へ走り出す。匂いに近づくにつれだんだんと妖気が強くなってくる。

白房は、人も通らぬ裏通りへとやってきた。

そこには、倒れている白い虎とその虎にとどめをさそうとしている鬼の姿があった。

虎の白い体毛は、あちこちが血に濡れ赤く染まっている。

(まて! ぼくがあいてだ!)

白房がテレパシーで鬼の脳に念波を送る。鬼がゆっくりと白房の方に振り返る。

獲物が一匹増えたのを喜んでいるのか鬼が舌なめずりする。

白房が四肢に力をこめ威嚇するように唸る。鬼が牙を露に白房に襲いかかる。

白房がありったけの力をこめ咆哮をあげる。

鬼の動きが止まり白目を剥き口から泡を吹いて地面に倒れる。

白房は、鬼が倒れたことを確認すると一目散に白い虎の所へ向かう。

白い虎の呼吸は、微弱で頼りない。

白房は、虎の首の後ろを甘噛みすると四肢に力を込め引っ張る。

虎は、白房より大きく子犬の白房では、びくともしなかった。

(どうしよう)

白房が考え込む。そして白房は、決心を固め妖気を集中する。

ゆっくりと白房と白い虎の姿が霧のように薄くなっていく。

アヤカシ達は、身体を滅ぼされても死なない。

魂がある限り住処に戻れば体を得て再び生き返ることができる。

白房は、住処である神社に帰るため一旦、身を解き魂となり白い虎を運ぶことにしたのだ。

そしてついには、そこにいなかったように消え去った。

 白房と白い虎の姿がゆっくりと皆川神社の境内に現れる。

(わかばちゃん。たすけて!)

白房がテレパシーで若葉に助けを呼ぶ。

「白ちゃん。どうしたの?」

母屋の方から若葉がでてくる。

(このこをたすけて!)

血まみれの白い虎を見つけ若葉が慌てて白房の所へ駆け寄る。

服が血で汚れるのも構わず白い虎を持ち上げる。

白い虎は、その大きい見かけによらず若葉でも何とか運べるくらい軽かった。

若葉は、白い虎を抱きかかえ治療するため母屋へと運び込んだ。

シーン1 禁軍武術師範に戻る

シーン3 三流探偵のいつもの仕事に進む

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