Hi’z 5 Errand〜はいず 5 えらんど〜

トーキョーN◎VA-The-Detonation

小説

シーン5 道士

マキシマム・揚は、受付で自分の名を名乗るとインペリアルホテルの最上階に通された。

「マキシマム・揚様ですね。主人が奥で待っております」

若い女性が出迎える。それは、人間と見間違うほどの若い女性の精巧な傀儡人形だった。数十体もの傀儡人形達が廊下の脇に控えていた。

人形の先導を受けマキシマム・揚は、傀儡人形が控えている廊下を進む。

マキシマム・揚が廊下の半ばで足を止める。先導していた傀儡人形が振り返る。

「どうかなさいましたか? マキシマム・揚様」

「そろそろいい頃合いだぜ。かかってこいよ」

マキシマム・揚が不敵に笑う。
それと同時にマキシマム・揚は、足を肩幅の広さに広げ両手をぶらりとたらした隙だらけの構えを取る。

この隙だらけの構えから相手に覚られないように自分の意を消し軌道を絶えず変化させた連撃を繰り出す。
これがマキシマム・揚が実戦で作り上げた自分の剣だった。

「何のことでしょう?」

傀儡人形が無表情に問いかける。

「見たいんだろう? お前達のご主人様が俺の実力を。お前達の見かけは、普通だが中身は戦闘用だ。
素人ならごまかせるんだろうが生憎と俺の目は、ごまかせん」

「その通りです。では、失礼させていただきます」

先導していた傀儡人形がマキシマム・揚に右上段回し蹴りを放つ。

マキシマム・揚は、蹴りの軌道を見切りわずかに身をそらしかわす。

そして挑発するように手招きする。

「一人じゃ相手にならん。全員でかかって来い」

その言葉に廊下脇に控えていた一斉にマキシマム・揚に襲いかかる。

マキシマム・揚は、一歩も動かず自分の攻撃範囲に入った者から倒していく。

攻撃を見切ってかわしそして拳、蹴りの一撃で傀儡人形を倒していく。

十人倒したところで傀儡人形達の攻撃が止む。

マキシマム・揚を中心点に円を描いて取り囲む。

「もう終わりか?」

「私がお相手します」

円の外より凛とした声が響く。その声を聞き傀儡人形達が円の一角を開ける、

そこから現れたのは道士服に身を包んだすらりとした長身の女性だった。

まっすぐこちらを見据える視線やぴんとのびた背筋から蘭心竹性の気風を感じさせる。

「名は、セレス・劉と申します。一手ご指南お願いします。禁軍武術師範殿」

「マキシでいい。禁軍武術師範なんてのはただの飾りだ」

マキシマム・揚が不敵に笑う。そしてかかってこいと挑発するように指を何度か曲げる。

「但し実力の方は、飾りじゃない。安心してかかって来い」

「それでは、参ります! 哮! 天!」

セレス・劉のが両手の中指と人差し指を立て重ねる。

道教でいう剣指を結ぶという動作だ。

重ね合わせた剣指を離すと同時に道士服の左右の袖から犬が飛び出す。

右の袖から飛び出してきた白い犬がマキシマム・揚の首に、左の袖から飛び出してきた黒い犬が足に向かって鋭い牙を
露にし襲いかかる。

マキシマム・揚は、まず左下段回し蹴りで足を狙う黒い犬を蹴り飛ばす。

その勢いを殺さず左足を軸に右上段回し蹴りで白い犬を空中で撃墜する。

犬達は、床に降り立つと即座に主人の足元に戻りマキシマム・揚を威嚇するように唸る。

「獣使いか。始めて見た」

「獣使い? 何のことでしょう? これは、私の宝貝の哮天犬です」

「なるほどね。そういうことにしておこう」

トーキョーN◎VAには、超能力を持つバサラと呼ばれる人種がいる。

その力は、個人差があり様々だがよく見られるのが元力と呼ばれる力である。

元力は、火炎を呼び出したり雷を放ったりと様々な力がある。

元力の種類が六つの系統と十二種類の力があるため六統十二元と呼ばれる。

だが近年になり六統十二元の他に新たな元力が発見された。

動物や植物を操る元力や物を自在に操る元力、更に重力を自在に操る元力である。

これらの新しき元力を使う者達は、六統十二元の力を扱う者達から差別され敵対している。

セレス・劉が自分の力を仙人達が使う様々な力を持った道具である宝貝と言い隠すのも

六統十二元の力を使う者達から狙われるのを避けるためだろう。

マキシマム・揚も雷の力を操る六統十二元のバサラであるためセレス・劉が自分の力を隠そうとする理由を瞬時に理解した。

だがマキシマム・揚は、正式な修行を経て力に目覚めたバサラでないため
こういった差別意識や敵対心をあまり持ち合わせていない。

だが本人が隠したいと思っているものを無理に認めさせるつもりもない。

「タイプDは、入れてるか?」

タイプDは、反応速度を爆発的に上昇させる神経加速装置である。

「はい」

マキシマム・揚の問いかけの意図がわからず不審な顔でセレス・劉が答える。

「今すぐ起動した方がいい。少し本気を出す」

セレス・劉がマキシマム・揚の言葉に従いタイプDを起動させる。

「起動させたか。行くぜ」

マキシマム・揚が踏み込み左下段回し蹴りでセレス・劉の右足を刈りにいく。

「哮!」

セレス・劉の命令に白い犬がマキシマム・揚の左足に体当たりし軌道をそらす。

さきほどと同じくマキシマム・揚が左足を軸に勢いを殺さず右上段蹴りを放つ。

「天!」

セレス・劉の命令に黒い犬がマキシマム・揚の胴体に体当たりし蹴りの軌道を逸らす。

マキシマム・揚が右足を地につけると同時に左拳をセレス・劉の顔めがけ放つ。

犬達への命令が間に合わず自らの右手でマキシマム・揚の左拳を払う。

マキシマム・揚は、拳を掌に戻し払いにきたセレス・劉の腕を捕まえねじりあげると背後に回り右腕でセレス・劉の首を極める。

「これでお前は、死んだ」

マキシマム・揚は、セレス・劉の耳元で囁くと極めていた首と腕を解いた。

セレス・劉は、すぐに振り返りマキシマム・揚に尋ねる。

「・・・マキシマム様もタイプDを起動したのですか?」

「いや。功夫を少し学んだだけだ。後は、経験の差だ」

確かにマキシマム・揚の攻撃は、神経加速を起動した時の素早さではなかった。

しかしそれでも神経加速を起動したセレス・劉の反応速度を凌駕した。

「落ち込むな。君が防御に集中していたらこうは上手くいかない」

セレス・劉が驚いた表情を見せる。

「なぜそのようなことをおっしゃるのですか?」

「防御に関しては、非凡な才能を感じるからだ。だからさ」

マキシマム・揚が慰めるように言った。

「ご指南ありがとうございます。マキシマム様」

セレス・劉が犬達を袖の中に戻し胸の前で掌と拳を合わせる。功夫を習う者が行う礼だ。

マキシマム・揚も胸の前で掌と拳を合わせる。

「陳 元義老師は、奥でお待ちです。ご案内します」

セレス・劉の案内に従いマキシマム・揚は、廊下を進む。

部屋に辿り着くとそこには、車椅子に座った老人がいた。

「陳 元義老師。禁軍武術師範マキシマム・揚様をお連れしました」

「ご苦労」

枯れた声とともに陳 元義がマキシマム・揚の顔を見つめる。

「大地を癒す雷雲となるか大地を切り裂く雷となるか。まだ天命は、定まっておらぬ。

心して天命を選ぶが良い。それによりお主の命数は、定まる」

マキシマム・揚が陳 元義の言葉を聞き考え込む。

しばらくしてからマキシマム・揚は、表情を戻し陳 元義に尋ねる。

「俺達への依頼は?」

「西海の守護が破られ災いがこのN◎VA中華街に降りかかる。

その災いを防いで欲しい」

「老師。それは、風水の乱れということでしょうか?」

セレス・劉が尋ねる。

「いや。かつていくつもの国を滅ぼした古の魔物が再び現世に現れるのじゃ。

即座に始末せねば必ずや災いをもたらす。急ぐがよい」

「わかった。行こう」

マキシマム・揚が頷き扉へ向かう。

「はい。それでは、失礼します。陳 元義老師」

深々と礼するとセレス・劉は、マキシマム・揚に従い扉に向かった。

「白き虎に探し助力を頼むがよい。おぬし達のみでは、勝てぬであろう」

部屋を出る直前に陳 元義が告げる。二人は、インペリアルホテルを出た。

すでに外は、日が落ち夜の帳が降りていた。

マキシマム・揚が星を見上げながらセレス・劉に話しかける。

「では、その白き虎を探すとするか」

「そうですね。マキシマム様には、何か当てはございますか?」

「昔の情報屋に当たってみるがさすがに今回ばかりは当てになるかどうかわからん」

「私の方は、中華最高陰陽議会に当たってみます」

「頼む。今回の情報収集は、そちらの専門分野になりそうだ」

「かしこまりました。お任せください」

「あと一つ注文いいか?」

セレス・劉が不思議そうにマキシマム・揚の顔を見つめる。

「その敬語だ。相棒に敬語で話しかけられるのは趣味じゃない」

「私は、陛下の臣下です。上位の臣下であるマキシマム様に敬語を使うのは当然です」

マキシマム・揚がセレス・劉の頑固さにため息をつく。

「セレス。君は、俺の命令従うか?」

「当然です。マキシマム様」

尊敬に満ちた眼差しでセレス・劉は、マキシマム・揚の顔を見つめる。

「命令だ。セレス。今回の事件が終わるまで俺に対し敬語を使う必要はない」

「えっ・・・」

セレス・劉が戸惑った表情を見せる。

「あの・・・ではマキシマム様のことは、なんとお呼びしたらよろしいのですか?」

「マキシでいい。命令に従え。セレス」

「はい。マキシ・・・様」

照れたようにセレス・劉が言った。

最後に様を付け加えたのは気に入らないがこの辺りがセレスの限界だろう。

そう思いマキシマム・揚が言った。

「それでいい。よろしく頼む。セレス」


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